コミュニケーションってなんだろう?

コミュニケーションについて、こんな面白い話があります。

 

ママは夕食づくりで忙しく、パパは風呂上がりにパンツ一丁でテレビを見ています。

そこへ宅配便がピンポ~ン。気を利かせたパパが、パンツ一丁のまま玄関へ出ようとしました。

すかさずママが一喝!!「パパ!!パンツ一丁で外へ出ちゃダメ!!」

・・・さて、この後のママの言葉で、パパの行動はどのように変化すると思いますか?

もしも「みっともないから!!」だったらどうでしょう?パパはカチンときて、

最後の砦のパンツ一丁さえも脱いでしまうかもしれませんね (>_<)

けれど実際には、ママは「また蚊に喰われるよ!!」と言ったのです。

この言葉でパパは部屋に戻ってステテコ履いてシャツを着てから玄関へでていきました。

なぜでしょうか。

この話には、ブリーフセラピーのエッセンスが良く現れています。

パンツ一丁のパパは、忙しいママに気を利かせて宅配の対応に出たのです。

そこに「パンツ一丁で出ないで」と一喝されたらカチンときますよね。

けれどその後の「蚊に喰われるから」という言葉には「あなたを心配している」

というメタメッセージが隠れていて、パパはそれを感じ取ったからこそ、

なんとか踏みとどまって服を着たのです。

 

メタメッセージとは、そのメッセージに隠された本当の、または裏のメッセージ、

対人関係の背後にあるメッセージの事。これがとても大事だと感じています。

ちなみに「みっともないから」という言葉だったらどんなメタメッセージを感じるでしょうか。

「あなたはいつもだらしない」と非難されているように感じて、抵抗しようとするでしょう。

するとその後のパパの行動はさっきとは変わってくるでしょうし、

そしてついでにその後の二人の関係性まで変わっていくのではないでしょうか。

 

このママさんの本当の意図はわかりませんが、パンツ一丁で外へ出ようとする

パパの行動(問題行動)を、抵抗なく、ひと言で、しかも円満に止めることが出来たのです。

これこそがブリーフセラピーの目指す問題解決の方法論。

けっして正論を使わず、相手が抵抗なく変化できる新たな枠組みを提供してあげる、

ということなのです。

なぁんだ、簡単なことじゃないかと思われた方、本当でしょうか?

人はこれまで生きてきた経験による考え方、捉え方の枠組みを持っているのですが、

自分ではそれになかなか気付きません。

あなたが「これが正解」や「常識」と思い込んでいる解決方法は役に立っているでしょうか。

問題解決のために「これが正解」と思ってやり続けている行動が悪循環を招いていたとしても、

もはや自分では止められなくなっている時、それこそが問題を維持している行動だと言えます。

例えば、母親が不登校を治そうと朝から子供と格闘することで、子供との関係が悪化することがあります。母の正論が悪循環を招くのです。

子供は不登校になることで自分を守っているので、母からどんな言葉を掛けられても

「不登校を治す」というメタメッセージを感じてしまうと抵抗が生まれます。

この悪循環を止めるためにブリーフセラピーでは、母のメタメッセージを

「正論ではない何か」に置き換えていきます。

すると関係性もその後の行動も変化していくのです。

さっきのママさんみたいにね (^^)

誰かとの上手くいかない関係を変えたいと思ったら、

あなたのメタメッセージを見直すことが、役にたつと思いますよ。

 

参考文献 Interactional mind 2019    ブリーフセラピー講義 若島孔文